BUFFALOES BLOG

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読書のすすめ

こんにちは!31料理研究家GrMGの椎名です。

七月はずっと30期だったのに、いきなり31期かよ!って思ったそこのあなた。それはきっとただの偶然ですので、あしからず。

 

先日授業を受けていたら、ふと蝉の鳴き声が聞こえてきました。夏が来たという実感と共にハッとしました。気づいたら七月も末。そう思った途端、窓から滲む空に夏色が感じられるようになるのが少し不思議です。ついに秋シーズン。戦いの季節です。新たな決意と共に、止まっていたペンを再び動かしました。

 

さて、今回のブログ、ATの瑞樹さんから多大なる新料理の期待を寄せられていますが、残念ながら今日、料理はしません!そんなに毎日夜食を食べるのは体に悪いですから……笑

料理は私の少ない趣味の一つですが、実は私にはもう一つ好きなことがあります。読書です。

私が千葉県某所に住んでいることは有名な事実ですが、そこから大学まで、だいたい二時間強かかります。乗り換えが多いため、時間帯によってはそれ以上かかることもしばしばです。その時間に彩りを与えてくれるのが読書でした。ミステリー、SF、純文学。感動、怒り、悲しみ、恐怖。様々なジャンルで感じる様々な感情はどれもこれも本当に素敵です。令和元年の昨今、日々お忙しい皆様におかれましても、気が向いたら、本棚に眠っている昔に読んだ本でも開いてみてはいかがでしょうか。

 

そして、ようやく今回のブログの本題ですが、私は「食べることが好き」から転じて食べ物を作ること、つまり「料理が好き」となりました。実は今、「読書が好き」から「小説を書くのが好き」に転じているのです。

そこで今回、私の書いた千字程度のほんの短編を一つご紹介しようかと思います。なんだか恥ずかしいですが、誰にも見せずに腐らせてしまうのもなんだと思ったので……笑

昨日書きたての出来立てほやほやです。誤字脱字等あったらすみません。もし暇で暇でしょうがないという方がいれば、是非読んでいってください。あなたの心に、ほんの筆の先くらいの色を加えることができたら、これ以上なく幸せです。

明日は、OLナンバーワン面白い男、田村さんです!それでは!

 

 

 

                  『右腕』

 

 右腕がポトリと落ちた。それは、季節を過ぎた花びらが散るような、あるいは、熟れた果実が限界を迎えて、枝の先からプツリとはずれていくような自然さで、肘の先からとれてアスファルトの上に落下した。もしそれを、かの有名な物理学者アイザック・ニュートンが見ていたら、落下していく僕の右腕を、アスファルトに着く前にそっと掴んで、声高々に「これが万有引力だ!」と叫んだに違いない。そう思うほど、その落下はあまりに自然の摂理に沿ったもののように感じられた。それでも僕は右腕が落ちたのを見て、かなり慌てた。急いで周囲を確認する。幸い、こちらを見ていると思われる人物はいなかった。こんなことがバレたら、母さんに怒られてしまう。焦った僕はサッと右腕を拾い、ワイシャツの中に潜り込ませて、制服とお腹の間に隠した。こういう緊急事態の時こそ、落ち着いて行動しなければならない。成績の悪い僕にも、そのことは何となくわかったので、それからの帰り道も走ったりせず、今まで通りの速度で歩き出した。

 中学からの帰り道は、小学校の時とほとんど変わらない。見慣れた道に沿って、見慣れた桜の木がどこまでも並んでいる。三ヶ月くらい前ではかなりの見物だったが、今はただ蝉がやかましいだけだ。見上げると、思い思いに伸びた枝葉が複雑に絡み合っており、夏の空を歪な形に切り取っていた。地面に落とされた影は異形の物のようで、おどろおどろしかった。所々アスファルトの色が濃いのは、二日前の雨のなごりだろうか。僕はお腹に隠した右腕を、制服の上から左手でそっと握りながら、景色の変わらない道を必死になって歩き続けた。はじめのうちは、道行く人とすれ違う度に、全身の神経が凍りつくような緊張を感じた。今の人、視線の先が僕のお腹ではなかっただろうか。さっきの人、僕の右腕に気付いたりしなかっただろうか。僕の緊張の高まりに合わせて、お腹の中の右腕もピクリと痙攣した。それは僕からとれてしまっても、確かに僕の右腕だった。しかし人間は慣れる。桜並木の道を抜けた頃には、僕も僕の右腕もかなり落ち着いていた。僕は左利きであり、たとえ右腕がなくても、それほど不自由しないという事実に気付いたということもあったのかもしれない。左手を制服の中に突っ込み右手の脈を測ると、それは、トクン、トクン、と静かに時を刻んでいた。狭くなった道ですれ違う時、譲った後に会釈なんかもできるくらいになった。お腹の右腕も手首を曲げて、コクリと手のひらを会釈させた。視線の先では、下校中の小学生が石けりをしている。三つの黄色い帽子が、視界の端で右へ左へ揺れる。僕はそっと微笑み、右腕はほのかにあたたかくなった。僕はそのまま、右腕のことを誰にも知られることなく、四時前に家に着いた。そっと扉を開けて、僕は息を止めた。

「おかえり。あれ、お腹なんか押さえてどうしたの?」

母親がちょうど玄関にいた。こういう時に限って、タイミングが悪すぎる。焦ってなんの言い訳も思いつかない。やっぱり僕の頭は役に立たなかった。伸ばされた母の手を見ながら、すべてを諦めようと思ったその時。母の右腕がポトリと落ちた。

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