BUFFALOES BLOG

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北海道のことばについて少し

はじめに

スラマッマラム!

河野からバトンを受けました,おじおじこと,33期MG(R)の山田悠嗣です.

普段はBUFFALOESの新ホームページの制作に取り組んでいるほか,練習中は選手のヒットを受けることもあります()

そんな山田が本日のストーリーテラーです.

北海道独特の言い回しについて

さて,河野からの問いについてお答えしましょう.

前提
  • 山田は北海道旭川市の出身である
  • 山田は1年4Qで言語学A(以下,lingAと表記)を履修した
  • 山田はlingAで北海道方言についてのレポートを執筆した

河野がこのことを知っていたかは不明ですが,僕が北海道独特の言い回しについてある程度の答えを示せることは確かです.

まず,単語レベルのものをいくつか示したのち,lingAでレポートのテーマとした助動詞「さる」をご紹介します.

単語レベルの例
  • ぼっこ:(小さめの)棒
  • (雪などを)ほろう:(~を)はらう
  • じょっぴん・かる:鍵(錠)(を)掛ける
  • (ゴミなどを)なげる:(~を)捨てる
  • サビオ:絆創膏
  • つっぺ/つっぽ:鼻血が出たときに鼻に入れるティッシュのアレ
  • ゴミステーション:ゴミ捨て場

これくらいを知っておけば,北海道に来ても困ることはないのではないでしょうか(ほんまか?)

こちらのサイトには北海道方言が網羅されていますので,確認してみるのもいいかもしれません.

僕の知らないものも結構あるんですがね…()

さて,続いて我らが北海道方言を象徴する助動詞「さる」についてのお話をいたしましょう.

まずは,「さる」の用例を見てみましょう.

「さる」の用例
  • ボタン押ささった(動詞+さる+過去・完了)
  • ボタン押ささらない(動詞+さる+否定)

「『押す』にしか使わねえのかよ()」と思ったあなたのために,もう少し先に資料を掲載しておきます.

一つ目の用例は,基本的には「しようとは思っていなかったのにそうなってしまった」という非意図の用法と呼ばれます.

ここには「自分にとって良くない結果になった」「しかし自分は悪くない」「謎の力が自分の体を媒介してそうさせた」という重要なニュアンスが含まれます(その意識なく使っている人もいます.資料参照).

「押ささった」に「しちゃった」を加えて「押ささっちゃった」と言うこともありますが,「しちゃった(してしまった)」は自分の責任を意識していると考えると,一旦責任を飛ばしてから再び自分のところに戻している…正直者ですね…()

あるいは,「押しちゃった」に「さる」のニュアンスを付加して結果的に責任を飛ばしているのかもしれません.

二つ目の用例は,特に否定の文脈でよく使うもので,可能の用法と呼ばれます.

ここにもやはり,謎の力によって動作が邪魔されているイメージがあります.

www.academia.edu

一つ目の用例の例外として,前の文が動作の可能性に言及している際に,可能の用法で用いることがあります.

「なんかこのペン書かさらないんだけど」

「しばらく書き続けてたら書かさるよ」

「あ,書かさったわ」

といった具合ですね.

さあ皆様お待たせいたしました,ここで僕がlingAのレポートを執筆するにあたって実施したアンケート結果の一部をお見せいたします.

drive.google.com目がチカチカしそうですね()

「見えさる」といった用法についても言及されています.

ほかにも,「言わさる」なんて使い方をする場合もありますし,本当にいろいろな使われ方がある便利な助動詞なんです(個人差あり).

このアンケートから,「さる」は北海道だけでなく東北地方の一部でも使われることがあるが,自分の責任を飛ばすイメージはない,ということもわかりました.

言語そのものについて

こんな大層な見出しをつけてしまったものの,僕ごときが言語学,ひいては言語そのものに口出しをすることなど到底できません()

しかしながら,皆さんに言語学の魅力の片鱗をお伝えすることくらいならできるのではないでしょうか.

言語学とはそもそもどのような学問なのか,東工大では「文系教養」と言われているし,バチバチに”文系”な科目なんじゃないか,そう考える方も少なくないと思います.

しかし実際は,言語学とは様々な言語に関する研究をとりあえずひとまとめにした名前であり,その中には文法を研究するもの,語彙の変化を研究するもの,発声や口の動きを研究するもの,機械学習を用いて時代ごとに使われる表現の変遷を調べていくものなど多岐に,そして往々にして”理系”的に取り組まれています(そもそも文系理系の二分はナンセンスであるとされる場合がしばしばあるので,その価値観をお持ちの方には是非,言語学について知ってもらいたいですね).

言語の特徴をもとに仮説をたて,それを検証していくというプロセスを経ることで,ある理解に辿り着く…そしてそのプロセスを互いに批判し合う…それが言語学の魅力の一つです!

ちなみに,僕が現在興味を持っているキーワードには,「言語的相対論」「意味論」などがあります.

さて,今は(広義)新歓シーズンというわけですから,1年生向けの情報もお伝えしておきましょう.

上記の方言をはじめとした言語学の様々なテーマについて,lingAではグループワークや教員との質疑応答を通して”広く浅く”,しかししっかりと学ぶことができます.

課題や期末試験が大変なのは確かですが,ことばを楽しみ,仲間たちと協力して理解を深めていけば,高得点も期待できます(僕は98点でしたが,仲間には100点を取った人が多数いました).

おわりに

いわゆる地方出身の皆さんは,東工大に来ていろいろな地域の人と出会ったことでしょう(このブログは東工大生以外も見るらしいのでこの書き方は不適切?).

ふとしたときに,自分のことばと他者のことばに違いがあることに気が付くかもしれません.

そんなときこそ,周りの人と話し合い,他者のことばを理解し,自分のことばをより深く理解することで,自分の今まで生きてきた世界や自分自身についてさらに理解できるでしょう.

そして,もしもそれが楽しい!と感じたら,そのときあなたはすでに立派な言語学者なのです!

cuckoo.js.ila.titech.ac.jp

www.ocw.titech.ac.jp

明日は

さて,ここまで長々と書いてしまいましたが,時計の針は刻一刻と進み,僕がメガネをかけたシンデレラでいられるのもここまでとなってしまいました(語り部は時に,物語の主人公になりえます).

次回は31期RBの冠者さんが,皆さんをご案内します.

それじゃあ,バイバイ!